07石見銀山 ;楽しきもの山のもの ;海のものとも山のものとも
2007/03/17 up 
石見銀山
2007/03/03(sat.)
大森の古い町並みと温泉津温泉
前日は  山のもの;伯耆大山 白きヤマタノオロチ
  石見銀山
【歴史】
1526年、石見の国は佐摩村;現在の島根県西部 大森町で銀鉱脈が発見された
時は戦国時代の真っ只中 各武将達が争奪戦を繰り広げ、徳川の世になってからは幕府の直轄地となる
17世紀前半には、この鉱山産の銀が世界の銀市場の1/3を占めるまでになった
世界進出が始まったばかりの欧州に、まだ日本という国が良く知られていなかった時代
佐摩村は“SOMA-silver”として、すでに広く世界に知れ渡っていた
シルバーラッシュに沸いた石見銀山であったが、昭和になり銀は枯渇し閉山された
【史跡】
現在、一般人が見学できる銀の採掘跡は、大森の町を流れる銀山川の上流に残る龍源寺間歩だけだそうだ
人力で掘った坑道は、暗く狭く、奥へ奥へと伸びている
かつて この辺りの山の中には、地下の迷宮のごとく続く抗が 無数に張り巡っていたのであろう
龍源寺間歩入り口 五百羅漢堂 銀山街道 いい雰囲気の道だ
銀山の里に近い場所には、古刹;羅漢寺がある
岩山を掘って作られた堂内には501体の羅漢像が収められ、危険な銀山の仕事で亡くなった鉱夫の魂を弔っている
他にも灰吹き法により銀を製錬した跡地などが残るが、
石見銀山には -自分の目からは- 特別立派な史跡・見張るほどの自然が有る訳ではない
【大森の町並み】
そんな石見銀山で自分が注目するのは、大森の古い町並みです
銀の山から銀山川を下流に行くと、川の流れに沿うように細長い町があり、
山陰の奥深い山中とは思えないほど家々が軒を連ねている
これがシルバーラッシュで出来た町;大森
最盛期には人口20万(!)にも達したそうだが、現代においては “すべてにおいて辺境の町”
しかし現在でも 銀鉱山に関わった人々の子孫が、先祖と同じ場所で“今”を暮らしている
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町の幅は50m越ぐらい それが自然の地形に合わせ、谷底を1Kmほど蛇行して続いている
その背骨である一本道を歩く
ここでの暮らしを少しでも観ようと想っていたが、
皮肉な銀の空から降る雨と、闇の時間が近いため、週末だが観光客はおろか、町の人も少ないは残念だ

歩き始めてすぐに、この町並みを構成している物が、アスファルトや電線といった現代のライフラインを除けば、
木・土・石 自然から あまり加工せずに得たモノであるコトに気がつく
それらの材料を使い、あきらかに人の手によって作られた家並みは、とても優しく目に映る
おそらく銀が涸れたと言う昭和の初期に、町並みの時間は止まってしまったのだろう

幕府が管理していた大きな建物、銀でひと山当てた豪商の屋敷、
そして普通の小さな家が通りに面して混在している
混在はしているものの、ついぞ観たことが無い町全体の統一感があって とても美しい
特徴的なのはアメ色の赤瓦
黒の石州瓦もあるが、目立って多く使われているのはアメ色の方だ
まっ白い漆喰に、そのアメ色の瓦が乗っていると、異国情緒とも想える不思議な感じがする
Onclick! 石州瓦 三巴の紋が多かった ワラを混ぜた土壁 Natural!
道の両側には積み石の水路 木も磨かれ、いい色を出している へ・へ・へ…
この町並みの統一感が生じた背景には、町中が『銀を!』と言う、共通の意識があった事や、
山と村全体に柵をめぐらせるほど、幕府が管理していた事などが考えられるが、
何より僻地のため、手に入る材料が前記に述べた限られた物だったという点が 大きく影響しているのであろう
無論 現在は“伝統構造物保護法”という柵が巡らされているのだが

【建物】
町並み全体に統一感はあるが、同じような建物が並んでいるわけでは無い
大森の古い町並みには、栄えた頃の裁判所や幕府役人の宿なども残るが、
なんといっても魅力的なのは、今も人々が暮す普通の家だ
大多数の家は切り妻で、長手を通りに向けて居住スペースを確保する手法の造りだが、
細部はみな個性的だ 縁側や軒、窓や玄関 限られた材料で、それぞれ皆趣を凝らしている
Onclick! 役人の宿だった青山家 めずらしく妻入りだ Onclick!
裁判所があるのも銀山ならでは Onclick! どこもかしこも、絵になる

【庭】
大森の町は深い谷間の底 平地は限られ、家々はピタリと軒を並べている
しかし、日本人は庭に憧れる
周囲は山 それこそ大自然に囲まれているのだが
それでも庭に花や木を植え、石を置き庭に凝る
Onclick! なんてコトない自然に囲まれた町;大森
Onclick!

【新しい大森】
大森も変りつつあるようだ 石見銀山として世界遺産の登録を目指しているそうだし、
民家の中を改装し、驚くほど洒落たブティクやギャラリー、シルバーアクセサリーのお店があった
ここはアートギャラリーでした Onclick!
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大森の古い町並みに、夜のとばりが下りてくる
 和紙のフィルターは灯りの多くを室内に反射し、ほんの少しを優しく外にもらす

石見銀山:歴史の記憶は山や大森の古い町並みだけではない
産出した銀や物資を運ぶための山越え道;銀山街道が、日本海の港に至っている
今回は雨に濡れたアスファルト 現代のシルバーロードを車で移動する

  温泉津温泉
石見銀山から ひと山乗っ越すと、日本海に面した小さな温泉津の港がある
ここが石見で産出した銀を積み出した港のひとつ
温泉津と書いて(ゆのつ)と読む “ゆのつのゆ” 『なんてかわいい韻なんでしょう!』
そう、ここは名湯としても知られている港町
銀山の鉱夫や、船旅の商人や役人がこの湯に浸かったそうだ

大正浪漫の外装 薬師湯 まずは震湯 薬師湯に浸かる
130年前の大地震で湧き出したので、震湯とも呼ばれているそうだ
5、6人が浸かれる楕円形の湯船には、固まった白黄色の温泉成分がこびり付いている
湯の注口は、元は金属製のナマズの形をしているのだが、やはり温泉成分のせいで白ナマズだ
そこから手に直接掬い飲んでみると、海水から尖ったショッパサを除いた味がする
海が近いため、ナトリウム系の湯だが、『ポカリスエット?』感覚的には甘いのだ
無臭のやや青みがかった湯は身体を芯から温めてくれる
今の時間、入浴されているのは皆さん地元の方で、お互い顔馴染のようだ
何かのお店を持つおじいちゃんから、旅館で働く若いお兄さんまで和気藹々
地元の話で盛り上がっている
次は薬師の向かいにある元温泉薬湯
ここは、タヌキが傷を癒しているのを猟師が見かけたのが始まりという伝えがあるので、
【薬】湯と謳ってもJAROは何も言わない -それは冗談として-
昔から、実際に確かな効能はあったのだろう
こちらも、この時間になると地元の方々の社交場だ

湯の方は座り湯・ぬるい湯・あつい湯と三つの湯船が並んでいる
これがかなり熱い湯だ -源泉は50℃!-
“ぬるい湯”の方で、自称;熱湯好きの自分が丁度よい
“あつい湯”の方は、浸かると身体を動かせない
皮膚がジンジンしてるのを〔ぐっ〕と我慢していると、
「どうだ、あついだろ」地元のおじさんが声をかけてくれる
『あついです〜 おじさんは毎日コレに浸かっているんですか?』
「ああ、この湯でなければ、入った気がせん」
『だめです〜』本当はさっと出たいのだが、湯が動くと痛いので そっと出た
「あっはっは 無理しちゃだめだよ」おじさん、あつい湯の中で笑う
湯質は先ほどの薬師湯と目・鼻では同じようだが、舌では若干の違いを感じる
基本的にはポカリなのだが、少し混じり物 土?の感じがした
こちらは渋い構えの元温泉薬湯
浴衣姿の湯治客にまじり、のぼせ気味の身体を冷ますように温泉街をぶらぶらする
今日は週末なので、宿泊の方も結構多い
温泉街といっても、豪勢なホテルが建っていたり ネオンの灯りがある訳ではなく、どちらかと言えば薄暗い。
建物は みな2・3階建で、中には歴史ある建物や寺などもあり、 落ち着いた温泉町を演出してくれている

陶屋がまだ開いていたので覗いて観ると、食器より瓶や壺などの大物が多く並んでいる
温泉津焼きというそうで、今でも温泉街のはずれに在る日本一大きな登り窯からは、何時も煙が昇っているそうだ
どれもアメ色が特徴だ そう、大森の古い町並みで多く使われていた“あの瓦”と同じ色
『そうか、あの瓦はここで作られた物なんだ』  -釉薬は出雲の土らしい-
内藤家の屋敷 北前船で儲けた? モダンレトロなお店が、この温泉街に良く似合う アメ色瓶は、はんど と言うベストセラー商品だ
やがて温泉街は漁港に抜け出る 暗い海の彼方で漁火が揺らめいている 今日は波も静かだ
【感想】
統一感と個性 大森の古い町並みは美しかった
都会のように、強制的な広告や和を壊す建物などが目に入るコトはナイ
かといって画一ではなく、それぞれが個性を求めている

自然に近い場所で、自然から直接モノを得て生きる
だから自然とも調和して暮らしてゆく
銀は人々を一喜一憂させ、涸れてしまったが、
石見銀山には、まだ自然と共存して暮す豊かさがある
この豊かさは、涸れさせないで欲しい

石見地方では神楽も盛んだそうだ
華やかで八調子の勇壮な舞 ヤマタノオロチの演目もあるそうだ  『ぜひ!』
翌日は  楽しきもの;出雲・松江 神々とへるんが居た場所  を巡りました

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