火焔太鼓 鼉太鼓 |
常設の雅楽舞台では無いので、雅楽演奏が終わると、すぐに舞台撤収がはじまる。
宮中雅楽演奏会で強くひきつけられた、巨大な火焔の太鼓が分解されて行く様は興味深い。 |
これは宮中楽部の舞台
火焔太鼓 部分名称
室外の為、簡易の架台に置かれている |
火焔太鼓は、雅楽的には鼉太鼓(だだいこ) -大太鼓とも- と呼ばれ、雅楽舞台の
後方の左右袖に一対配置される。
構造的には、右方も左方も同じサイズで、全高サ約6mと、この広い明治神宮御社殿境内に
おいても、巨大なモノであることはよく判る。
が、楽器としての鼓面は直径2m弱、厚さは1mほど。 これはこれで大きいのだが、
全体からすれば小さなものだ。
だれもが目をひかれる火焔の装飾は、雲象板と呼ばれ 太鼓胴の周囲を、その倍近いサイズで
取り巻き、雲象板の先端からは1mほどの長い棹が立ち、頂には光輪の装飾が取り付けてある。
雲象板は天地方向に二分割できる仕組みで、太鼓部を挟み留め、火焔上部の前後の
三弁宝珠が貫となっている。 |
楽器としての構造は、前後の鼓面を紐で結び、張力を与えている締太鼓である
すなわち、雲象板も光輪も、まったくの 「飾り」 で音響的には意味を持たない。 |
今回鑑賞した舞楽と、楽器合奏だけの管絃を合わせて“大陸系雅楽”と呼ぶ
火焔太鼓は、その内の舞楽だけで演奏され、且つ左舞では左方の火焔太鼓だけを
叩き、右舞時は右方の火焔太鼓だけを用いる
音の調律や、演奏の方法に左方・右方の差は無く、火焔太鼓が設置できない狭い室内では、
舞楽においても、楽太鼓で代用することも可能だ。
楽器としての役割は、雅楽の舞台で一番目立つモノなのに、ソロで乱打したり、リズムを
刻むパーカッションでも無く、拍子で 図・百と鳴すだけで控えめだ。
雅楽において太鼓は、洋楽のようにリズムを保つのではなく、曲全体の周期を定め、
告げる楽器だそうだ。 |
おそらく管絃だけの演奏会であっても、室外で行われる神聖な雅楽には火焔太鼓を
置くのであろう。 ここまでくると、楽器というよりも舞台装置としての役割を強く感じてしまう。
火焔太鼓は日本固有の楽器(舞台装置)で、雅楽の祖となった大陸には、このように
大きく、絢爛豪華な装飾を施された太鼓は存在しなかったそうだ。 |
では、なぜ火焔の装飾? なぜ巨大? なぜ右左一対が必要? なのだろう |