07宮内庁式部職楽部 秋季雅楽演奏会 鑑賞;楽しきもの
2008/07/14 up    
宮内庁式部職楽部 秋季雅楽演奏会 鑑賞
2007年 10月21日(日)
皇居にて行われる、宮内庁式部職楽部の雅楽演奏会を初鑑賞
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 開場前
この建物は いただけない。 ぜんぜんダメ。
桃花楽堂(とうかがくどう)
宮内庁式部職楽部 秋季雅楽演奏会は、皇居東御苑内
天守閣跡そばに建つ楽部庁舎にて行われる。
座席指定では無いので、良い席を確保するため、
朝早くから開門前の北桔橋門に並んだ。
開門後、入園票を持って 今度は楽部前にて開場を待つ。
この建物は “らしくて” 素敵
宮内庁楽部庁舎正面
列もだいぶ長くなった頃、開場となるが、襟元に菊紋バッチが
輝る警備員からのチェックを受けなければ、中には入れない。
演奏会に来慣れている彼女によれば、今回は身分証明、
手荷物検査等 チェックが大分厳しいそうだ。
演奏会には天皇家や、皇族も観覧することがあるので、
ご時世しょうがない。

 雅楽の舞台
 楽部の玄関をくぐると、漆喰の壁や大正ロマンあふれる電設など
外観以上にオンボロだが、趣があってナカナカ好い。
だが、明るく広がる準備の整った雅楽の舞台に目を転じれば、
そこには、すでに神聖と緊張感が律していた。
 雅楽(特に舞楽)は本来、室外で行われるモノであり、この楽部も室外を
イメージして建てられた、式部職楽部用の全天候練習場である 。
建物だけを見るならば、白玉砂利敷きで、大きな天窓や軒の意匠の効果も
あって、通常のホールなどと比べると、明るく、まるで中庭のように思えて、
 『これはこれで、ナカナカ近代的デザイン』と、思える。
 しかしそこに、朱色の高欄に囲まれた正方の高舞台、両袖には巨大な
火焔の太鼓一対が聳えていて、雅楽の舞台が整っていと、教会のような
神聖さと、歴史あるオペラ・ホールのような緊張感_ いや、
絢爛だが、シンプルな構成なだけに、傍観的ではなく、自分も舞台の一部に
取り込まれ、律されているような気がしてくる。
ここは、はしゃがず静かに座して開演を待つとしよう。
 雅楽の舞台は、一般的には北を正面とし南に面してしつらえられる。 天子は南面スであり、宮殿や社寺に向かって雅楽を奉納するためだ。
しかし式部職楽部の舞台は、南西を正面としている。 これは現天皇の住まい:吹上の御所が楽部の南西に建つからであろう。

 雅楽
 皇族の方が着席し、いよいよ開演だ。
まずは管絃 季節は秋だが今回は黄鐘調だ
音取により場が整う。
西王楽破はテンポの良い曲だ
    雅楽は今まで数回しか鑑賞したことが無いが、さすが宮内庁
   ひとつひとつの音もしっかりしているのに全体も調和がとれ、洋楽慣れしている私にも “気持ちいい調べ” に感じる。
越殿楽 残楽三返
    同じフレーズを徐々に楽器を減らしながら繰り返し、最後は琵琶とが弾かれる今回の残楽三返
   開演前に 「残楽三返は聴きどころ」と彼女から聞いていた。
   たしかに。 波のように音の厚みが変化しながら曲が進み、波打ち際のような余韻を残しながら曲がひいてゆく様の演奏は、
   世界最古のオーケストラにふさわしい。
拾翠楽
       現在の管絃の曲目には、元々は舞を有する曲だったが、舞は忘れ去られ曲だけが残っている場合も多い。
   拾翠楽も、そんな曲のひとつだそうだ。
   ゆったりした曲調を聞きながら、海辺で緑の藻を拾う海人の姿を想像する。
演奏中は撮影できません
管絃は高舞台上で演奏します
舞楽中の管方
舞楽の時、管方は後方の楽屋で演奏します
     休憩をはさみ、後半は大好きな舞楽だ。 
陵王
    龍の叫びから始まる小乱声、そして鮮やかなオレンジ色の衣で陵王の登場だ。
   管絃より早い調子、龍笛追吹や打ち物が鳴り響く中、またでは、すり足の音が聞こえる静けさの中でも、力強く舞う陵王はく美しい
     左舞いに続き右舞
綾切
    うぐいす色の右肩袒、左は白袖で内側が朱 そんな綾切の装束で、四人の舞がみごとに揃う
   柔らかく優しい舞なので、隅々まで動作を合わせるのは、いっそう大変であろう。
 舞楽で面白いのは、専門の舞人は存在しないことだ。 楽器奏者の楽師から舞人を都度選出する。
また、宮内庁式部職楽部の楽師は、ある程度専門な楽器はあるが、他に数種の楽器演奏も習得している。
そして驚くべきことに、皇室の行事においては、洋楽も演奏(タキシードに洋楽器!)するといった多芸集団だ。

 鼉太鼓
 鼉太鼓(だだいこ) -大太鼓、火焔太鼓とも- は不思議だ。
右左で一対の鼉太鼓は、どちらも同じ大きさで、舞台後方の袖に配置される。
床からの高さサは7mと巨大で、太鼓の打面は直径1.5mほどだが、その周囲に火焔を
イメージした板が鼓面の倍以上のサイズで取り巻いている。
その上部には長い棹が立ち、頂には光輪の装飾。
火焔板も光輪も、まったくの 「飾り」 で音響的には意味を持たない。
左方の鼉太鼓
楽部の鼉太鼓は京都二条城より移されたモノ
 雅楽には、厳密な “きまりごと” が沢山ある
鼉太鼓もその “きまりごと” によって、管絃中には打たれることは無く、舞楽のみで鳴らされる。
その舞楽時も、左舞には左の太鼓を、右舞には右の太鼓を用いると、一対のモノなのに演奏は
使い分けがなされる。
演奏も、雅楽の舞台で一番目立つモノなのに、ソロで乱打したり、リズム刻むパーカッション
でも無く、拍子図・百と鳴すだけで控えめだ。
 おそらく管絃だけの演奏会であっても、室外で行われる神聖な雅楽には鼉太鼓を置くであろう。
ここまでくると、楽器というよりも舞台装置や祀具としての役割の方を強く感じてしまう。
鼉太鼓は日本固有の楽器(舞台装置)で、雅楽の祖となった大陸には、このように大きく、
絢爛豪華な装飾を施された太鼓は存在しなかったそうだ。
鼉太鼓については 楽しきもの 08明治神宮 春の大祭


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