昇殿し伊八の作品見学を申し込む。 少し待って、本殿から廊下でつながる別棟に通される。
ここまでの豪華絢爛からうって変わり、渋い色合の部屋。普通の農家の家中といった、その欄間に“波の伊八”がある。
現代の自分から観ると、欄間を飾る作品というより、「作品を見せる為に欄間あり」といった堂々としたサイズと作りだ。
伊八は安房鴨川に生まれ、多くの欄間彫刻の名作を残した。
特に波を彫らせては天下一と言われ、波の伊八の異名で知られた。
「伊八は毎日酒を持って海に馬を走らせ、乗馬したまま波を被りながら波を横からスケッチした。」と、案内してくれたおじさんが語ってくれました。
薄暗い部屋だが、よく見れば木目と波がマッチしているし、なによりも構図が波乗り目線だ。 |
伊八;波に宝珠 |
葛飾北斎;神奈川沖浪裏 |
撮影不可故、行本寺のパンフレットより |
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葛飾北斎は、堤等琳の元で共に絵を学んだ等随の絵“土岐の鷹”(この作品も観れます)を観るため、この東頭山 行元寺を訪れた。 最初は制作中に、後に完成された作品を。 その際に“伊八の波”を視て影響を受けたのであろう。 晩年、北斎は富嶽三十六景『神奈川沖浪裏』に“伊八の波”をオマージュする。
やがて北斎の波は海を渡り、ゴッホが賞賛し、クローデルの波となり、ドビッシーの『ラ・メール』に繋がって行く。
みんな、このブレークせんとする瞬間の波に魅了されたのですね。 |